気象ゼミごっこ

気象予報士試験に向けて、大学のゼミみたいに勉強するブログ

第51回気象予報士試験 学科専門分野 復習①

第51回気象予報士試験の結果が届きました!

専門惜しかったです。

 

気をとりなおして、今回から専門分野を復習していきます。

 

問題はこちらから↓

 

www.jmbsc.or.jp

 

 

問1 観測機器の設置について

問題文にも、気象庁の気象観測ガイドブックに述べられている…と書いてあるくらいなので、受験生はこれを見よ!ということなんでしょうね。

私は印刷してバインダーに入れていましたが、読み込んでいなくて間違えてしまいました^^;

ガイドブックはこちら↓ 気象庁のホームページにあります。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/guidebook.pdf

 

また、気象台のホームページでも詳しく書かれています。

 

www.jma-net.go.jp

 

(a)温度計について

温度計が収容されている通風筒は、風通しの良い日陰に設置することとされている。

➡︎これは×です。

 

アメダスの観測環境についてはガイドブックの8ページに記載してあります。

日陰というところが×ですね。風通しが良く日当たりの良い場所に設置します。

 

(b)雨量計を高い建物の屋上に設置する場合

ガイドブックの15ページに記載があります。

高い建物の屋上では摩擦力が弱くて風が強く吹いていますので、やむを得ず雨量計を高い建物の屋上に設置する場合、出来るだけ内側に、端から1m以上、できれば3m以上離して設置します。

 

(c)積雪計の測定面

積雪計に関しては45ページから説明されています。

測定面は凸凹であってはならず水平を確保する必要がありますが、コンクリートや鉄板などを敷いてはならないと記載されていますので、(c)も誤です。

測定面は芝生など自然な状態にする必要があります。

 

問2 気象レーダーに関して

”下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ”という問題は、下線部以外の記述は正しいのでそれをヒントにすることができます。

 

(a)前半の文章で、雨滴の体積が1/2倍になると雨滴から散乱される電波の強さは1/4倍になる、というヒントが与えられていますので、何も勉強していなくてもこれは正しい文章だとわかるでしょう。

 

霧雨のように散乱する降水粒子の直径がレーダーの波長(3cm〜10cm)に対して十分小さい場合、レイリー散乱します。

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このように、一般的な気象レーダーでは同じ降水量でも降水粒子の大きさの違いによって受信強度が変わってしまいます。(降水粒子が大きい方が強く散乱されてしまう)

粒子の小さい霧雨は、降っていてもレーダーでエコーが観測されないことがあります。

 

(b)(d)  X-MPレーダーについて

このような制約を解消するのが、より波長の短いXバンドの波長の電波を使用した気象レーダーです。

電波(電磁波)というのはそもそも直交する電場と磁場の2つの成分からなる波のことです。

通常の気象レーダーでは水平偏波のみを利用しているのですが、X-MPレーダーでは垂直偏波も利用することで、降水粒子の形状を知ることができます。

 

↓参考になります。

mp-radar.bosai.go.jp

 

(c)ドップラーレーダーで竜巻を検出できるか

ドップラーレーダーというのは、ドップラー効果を利用して風の観測をするものですが、これを連続して使うことによりメソサイクロンの検出をすることができます。しかし、竜巻を直接検出することはできないので、cは誤です。

 

問3 数値予報における客観解析について

数値予報についてはちょっと忘れてきたし、勉強が足りていないのでまた今度ブログでまとめようと思います。

 

今回は簡単な数値予報のイメージを作ってみました。

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〜数値予報の基本的な考え方〜 

アメダスや気象レーダーでは、気温や気圧など気象要素を観測していますが、観測点は空間的にも時間的にもまだらで、例えば海上では観測点が少なかったりします。

気塊の運動を考えるとき、気塊をラベリングして質点のようにみなして追っていく方法(ラグランジュ的方法)は、気団の移動を考える際には有用ですが、多くの気塊を常に識別して調べることはとても大変です。

そこで、各空間の固定点での物理変数の偏微分的時間変化を計算していく方法(オイラー的方法)が流体を考える上で実用的だと考えられます。

このような考えから、まずは規則的に配列された格子を作り、観測データに基づいて、ノイズをキャンセルしたり重み付けをして、各格子に固定のデータ(初期値)を作ります。物理法則にこの初期値を入れて時間積分すると各格子の予報値が求められるので、それを使って天気予報をしよう!というのがざっくりとした数値予報の考えです。

(あんまり自信ないので、もうちょっと勉強してから今度記事にしますね!)

 

(a)解析値の決め方

観測データから格子点上の値を数理的な計算によって算出することを客観解析といいます。第一推定値とは、前の初期時刻の予報結果のことで、これと観測値の双方に重みをつけて内挿し、解析値を求めます。

修正の重みは、観測データのもつ誤差と第一推定値のもつ誤差の大きさなどを考慮し、初期値は誤差の小さい方に寄るような値にセットされます。

➡︎(a)は○です。

 

(b)データ同化について

問題文は「3次元変分法は」という書き出しで、それ以降で4次元変分法について記述していますから(b)は×です。

・4次元変分法

解析時刻における観測データだけではなく、過去の観測データも使って、数値予報モデルで繰り返し時間積分し修正していくことで、最適な解析値を得ようとする方法です。

精度の高い解析値を得ることができるので、全球解析(GSM)やメソ解析(MSM)で使用されています。

問題文の通り、計算量が膨大になるという欠点があるため、速報性が問われる局地解析(LFM)ではこれが使われず、3次元変分法が使われています。

・3次元変分法

時間変化を考慮せずに、様々な観測が解析時刻に得られたと仮定して解析します。

数値予報モデルを実行しないため計算量が少なく、より迅速な処理の求められる局地解析(LFM)や毎時大気解析で活躍しています。

 

(c)GPS衛星を利用して可降水量を算出し、数値予報の客観解析で利用されている

これはわかりませんでした。

調べてみたら、気象庁からの発表資料がありました↓

https://www.data.jma.go.jp/add/suishin/jyouhou/pdf/304.pdf

2009年から国土地理院GPS衛星から得られる水蒸気の情報をメソ数値予報モデルの初期値解析に利用することになったそうです。

これにより降水予報の精度が上がったということです。

 

問4 数値予報モデルの物理過程について

(b)格子間隔と表現可能な現象のスケール

数値予報モデルは、格子間隔の5〜8倍のスケールの現象が表現可能です。

MSMの格子間隔は5kmでスケール25km〜の現象を表現可能です。

個々の積雲の振る舞いを十分表現することはできないので(b)は誤です。

また、LFMでも個々の積乱雲が表現できるほどではありません。

 

数値予報では、基礎方程式で記述されるような格子スケール以上の力学的な大気の変化を「力学過程」と呼び、それ以外の、格子点値が時間積分されたあとに取り込まれるような外力や相変化に伴う加湿効果、摩擦力などを「物理過程」と呼んでいます。

格子スケールより小さい(サブグリッドスケール)現象の格子スケールに及ぼす平均的な効果を格子点値から評価し、格子スケールに取り込んでいくことをパラメタリゼーションといいます。

 

(a)常識的に×

大気中における降雪の融解や降水の蒸発の効果は予報結果への影響が”大きい”ですし、このような効果は数値予報モデルに取り込まれます。

 

(c)これも常識的に考えて○

積雪の有無は地上気温に大きな影響を与えます。さらに、その積雪が新雪か古雪かということで断熱効果も変わってきます。地表面の状態は数値予報に取り込むべき大事な要素です。

 

(d)大気境界過程

地表面付近では乱流が卓越しており、運動量や顕熱、水蒸気が鉛直輸送されていて、地表面の影響を大気層に伝えています。

乱流による輸送の効果は、定常的ではなくて日変化は大きいので(d)は×です。

格子スケールよりはるかに小さい現象であり、パラメタリゼーションで数値予報モデルに取り込まれています。

 

問5 気温ガイダンスによって数値予報の誤差軽減が期待される具体例

ガイダンスは、数値予報の応用プロダクトの1つです。数値予報の結果から誤差を除去したり、天気予報に翻訳したりしたものです。

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気象庁のガイダンス資料より

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpreport/64/chapter1.pdf

 

これによると、

”ガイダンスは数値予報データと予測対象である実況の観測データを用い、統計手法によって予測式を作る。 ”

 とあります。

 

ガイダンスでは数値予報の結果から誤差を修正することができますが、修正できる誤差は偏った傾向をもつ誤差(系統的誤差)です。

例えば、地形や陸海の境界が数値予報モデルで用いられているモデルと実際のものとで違っていることによる誤差は系統的誤差として統計的に扱うことができ、軽減することができます。

一方で、数値予報そのもので予報ができていないために生じる誤差(前線や低気圧の発生・発達・移動など)はガイダンスにとってはランダムに生じる誤差であり、基本的には修正することができません。

 

以上の基本的な考えを踏まえて、問題を見てみると・・・

 

(a)これは系統的な誤差で修正可能

(b)これも系統的な誤差で修正可能

(c)数値予報モデルが予報できなかったことによって生じる誤差なので、ランダム誤差で修正不可能

 

といったように簡単に正解にたどり着けます。

 

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専門分野は今までブログで全然扱っていっていなかったこともあり、

長くなりがちなので復習を3回に分けたいと思います。

最近は機械学習がブームがですが、気象の専門分野を勉強してみると、その基礎となる部分がちょっとわかります。

例えば線形代数とかフーリエ変換とか…理系の人しか興味がなかったようなトピックに、最近は文系の人も注目しているような、ちょっと世の中で身近なものとして扱われてきたような雰囲気を感じます。

そんな雰囲気も手伝って、私も特に気象の専門分野では、理系的なところを学び直していきたいと思っています!

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