気象ゼミごっこ

気象予報士試験に向けて、大学のゼミみたいに勉強するブログ

気象解析と機械学習①

気象庁では、アメダスとか気象レーダーで温度や気圧などの気象要素を観測して、それを元に未来の天気を予想しています。

一言で言ってしまえば、物理法則に基づいて時間変化を数値的に計算しています。

ここで使われている技術や手法が試験のための参考書でも書かれているのですが、もう少し汎用的に、一般的なデータ解析の話から勉強していきたいと思います。

 

 

 

最近は機械学習の第3次ブームということで、データ解析とか統計の分野が結構盛り上がっていますが、機械学習ディープラーニングは50年以上前から研究されてきたことで、数値予報は1959年から気象庁で採用されているそうです。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/whitep/1-3-1.html

 

現在のブームで「AIが仕事を奪う」とか「未来は何でもAIで解決できちゃう」とか言うときのAIというのはほとんど深層学習(Deep Learning)を指していて、AI(Artificial Intelligence)はもっと広義に、人間が行う知的活動をコンピューターに代わりにやってもらおうというものです。機会学習はその中でもデータの解析を自動でコンピューターにやってもらおうというものです。

データ解析の手法の1つにニューラルネットワークというのがあり、これは人間の神経系をお手本にしたモデルで、これを多層に発展させたものが深層学習です。

研究されていたけれど実践が追いついていなかった深層学習ですが、コンピューターの性能が上がったことで実装可能になり、第三次AIブームということで盛り上がっています。

 

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数値的に解くってどういうこと?

数式の解き方には大きく分けて2つあります。

①解析的解法

式変形によって答えを出す

②数値的解法

具体的な値を代入することにより答えを出す

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解析的に(代数的に)簡単に解ける例を出してみましたが、気象予報に使われる方程式は解析的に解くのが難しい偏微分方程式なので、スーパーコンピュータで数値的に計算しています。

 

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 ※研修テキストより

気象庁ではコンピューターが数値計算をして、それをガイダンスという私たちが気象情報を受け取る上でわかりやすい資料を提供していますが、その翻訳・修正のプロセスで機械学習の手法が使われています。

 

天気予報のガイダンスができるまで

長くなるので今回は最初のほうだけお話したいと思います。

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 ※気象庁HPより

スーパーコンピューターで数値的に計算するために

まずは、コンピューターで扱いやすくするために、地球の大気を格子で区切り、格子上にそれぞれ気象要素を初期値として設定します。

このプロセスは、大気という連続的なものを離散化するということです。

 

 この辺の話は以前も少ししました。

 

meteorolo.hatenablog.com

 

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アメダスや気象レーダーでは、気温や気圧など気象要素を観測していますが、観測点は空間的にも時間的にもまだらで、例えば海上では観測点が少なかったりします。

気塊の運動を考えるとき、気塊をラベリングして質点のようにみなして追っていく方法(ラグランジュ的方法)は、気団の移動を考える際には有用ですが、多くの気塊を常に識別して調べることはとても大変です。

そこで、各空間の固定点での物理変数の偏微分的時間変化を計算していく方法(オイラー的方法)が流体を考える上で実用的だと考えられます。

このような考えから、まずは規則的に配列された格子を作り、観測データに基づいて、ノイズをキャンセルしたり重み付けをして、各格子に固定のデータ(初期値)を作ります。物理法則にこの初期値を入れて時間積分すると各格子の予報値が求められるので、それを使って天気予報をしよう!というのがざっくりとした数値予報の考えです。

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 空間を離散化するには①格子点法(差分法)②スペクトル法の2つの手法があります。

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MSMは格子点法で、GSMはスペクトル法で離散化されています。 

①格子点法

これは微分方程式微分を差分商に置き換えて近似したもの。メッシュを考えている。

②スペクトル法

フーリエ変換によって、いくつかの波の重ね合わせで状態を表現する。GSMでは格子点法だと両極付近で格子点が集中してしまうので、スペクトル法が用いられる。

※この辺はちょっと複雑な話なので、ざっくりとこんなところで次にいきましょう!

 

時間方向の離散化と計算の安定条件

空間の離散化により時間変化率が求められたので、時間も離散化します。

時間積分の刻み間隔(時間積分間隔)も空間同様、小さい方がより精度良くなりますが、その分計算に時間がかかります。そして積分間隔を大きくしすぎると、精度が良くないというだけでなくて、数値的安定性が保てなくなります。(CFL条件)

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ここまでが数値予報モデルで気象予報をするための下ごしらえみたいなお話です。次回数値予報モデルに実際に観測データを入れていく、ということからお話していきたいと思います。

最近は気象ビジネス推進コンソーシアム という気象のデータをお天気の予想だけではなくてビジネスにも使おうという動きがあり、数値予報で使われているようなデータ解析の技術を気象に関わる人がわかっていると得すると思っています。

https://www.youtube.com/channel/UCyYJhGTAcpLeRnWoQxFbovw