大気の熱力学③熱力学の第一法則
時間がないない病だとか、パソコンが壊れたとかでゼミごっこの更新がすっかり滞ってしまっていました。
今回は、気象を勉強する上で基本となる法則の一つである「熱力学の第一法則」を紹介しつつ、いくつかの物理量を導いていきたいと思います。
その前に、
■前回のおさらい
前回は静力学平衡について勉強しました。
①空気の運動方程式を球座標で書き表すと、
コリオリの力を地球の引力に比べて非常に小さいものとして0に近似し、さらに空気塊が鉛直方向に加速していない状態を静力学平衡の状態という。
②静力学平衡の式は気圧と高度の関係を表している。
→上空ほど気圧が低い
③状態方程式を代入することにより気圧と温度の関係も表すことができる。
→気温の高い層ほど厚みがある
このようなことを勉強しました。
今回は熱力学第一法則です。
気温や降水について知ろうと思うと、エネルギーについて考えなければなりません。
エネルギーっていうのは何なのかというと、「仕事に変換できるもの(量)」と言えます。風船で考えてみると、風船がひとりでに膨らむってことはないわけです。誰かが吐き出した空気のおかげで内部の気圧が上がるとか、外部から熱が加えられるとか、とにかくエネルギーが増大しないと、膨らむことはできません。
ΔQ=ΔW +ΔU
これが熱力学第一法則です。
分子の運動エネルギーが内部エネルギーです。
分子の運動エネルギーが増大するということは、温度が上がるということであり、ΔUは温度だけに依存する量です。
気象での計算で使いやすいように、この式を少し変形します。
まず、乾燥空気塊が断熱的に上昇する場合を考えます。
さらに、状態方程式を用いると、温位という量が求まります。
これは、例えば 850hPaの空気塊と500hPaの空気塊を比べるとき、500hPaの方が気圧によって低い気温になりがちです。
潜在的な気温を知る為に、乾燥断熱的にどちらの空気塊も1000hPaまで降ろしてみたらどうなるか、という量で比べてみませんか?というのが温位という物理量の考えです。
乾燥断熱的に空気塊を移動させる時に、温位は保存されます。
次に、飽和している空気塊を考えてみます。
空気塊を上昇させると、空気塊の温度が下がり、その温度に対する飽和水蒸気量は下がるので、その分の水蒸気が凝結し、潜熱を放出します。(Δzだけ上昇すると、水蒸気の量はΔwだけ凝結する)
外部からは加熱されませんが、凝結熱が空気塊を暖めます。
そのおかげで、飽和した空気塊が断熱的に上昇するときの気温減率(これを湿潤断熱減率といいます)は乾燥断熱減率より緩やかです。
湿潤断熱上昇過程についても、保存される熱力学的量を考えてみます。
これが相当温位の定義です。
飽和した空気塊を断熱的に上昇させて、含んでいた水蒸気を全て飽和させます。(潜熱として全て放出)その空気塊を断熱的に1000hPaのところまで持ってきたとき(この間ΔQ=0)の温度が相当温位であるということです。
相当温位は乾燥断熱過程でも湿潤断熱過程でも保存されます。
水蒸気を含む空気塊の温位は、その空気塊の相当温位より高くなることはありません。
相当温位は水蒸気が凝結して潜熱を放出し、その熱が気温に与える、ということも考慮した量ということですね。
ここで、空気の水分を表す物理量をもう少し見てみましょう。
▼相対湿度
▼混合比
▼比湿
▼露点温度
気温が低いとき、窓に水滴がついていることがありますね。
気温が下がることで、飽和水蒸気量が下がり、もともと水蒸気として存在していた水分子が液体となってしまいます。この現象を結露と言い、結露するときの温度を露点温度と言います。つまり相対湿度が100%となるときの温度です。
色々な物理量が導入されましたが、これらを可視化するのにとても良い方法があります。それがエマグラムというものです。
次回はエマグラムを紹介したいと思います。
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今回は熱力学第一法則に関して勉強しました。
温位や相当温位などの物理量は、導出する練習を何度かした方が良いかもしれません。
導出はらくらく突破には書かれていないんですが、私はその方が納得できるので何度か練習したいと思います。