大気の放射②太陽の熱
前回に引き続き、大気の放射について勉強します。
前回のおさらい
①光は波であり、粒子である。光が物質に当たったとき相互作用により反射
②太陽光(電磁波)が大気中のエーロゾルに入射するとき、光はレイリー散乱する。
その散乱の強さは電磁波の波長の4乗に反比例する。(波長が短いほど散乱が強い)
→空が青く見える →夕焼けが赤く見える
③太陽光(電磁波)が大気中の雲粒に入射するとき、光はミー散乱する。
その散乱の強さは電磁波の波長の長さにほとんど依存しない。
→雲が白く見える
④太陽光(電磁波)が大気中の雨粒(や氷晶)に入射するとき、光は屈折や反射をする。
→虹や彩雲などの大気光学現象
このようなことを勉強しました。
太陽と地球
地球は地軸が公転軌道面の垂直線に対して、23.5度傾いています。
そのため、太陽と地球の位置関係によって、太陽から受ける熱の量が違います。それが季節の変化が起きる要因なんですね。
この図を見てわかるように、夏至の日というのは、緯度23.5度の地点の南中高度(正午における太陽の高度角)が90°になる日です。北半球で一番昼が長い日です。
逆に冬至の日は、南緯23.5度の地点の南中高度が90°になる日です。
春分点と秋分点は、黄道と天の赤道が交わる点なので、春分の日と秋分の日は、緯度0度(赤道面)で南中高度が90°になります。
太陽からの熱
電磁波を放射しているエネルギー源となるものが中心にあって、中心からの距離が異なる球体がその周りを包んでいるとき、球体上で受け取る全熱量は等しくなります。このように放射強度という物理量で式に表すことができます。(垂直に入射するものとすると)
太陽が太陽の周りで放射している放射量と太陽と地球の大気までの距離をrとした球面が受ける全放射量は等しく、地球大気の上端で受ける太陽からの放射強度は太陽定数として定義されています。
以前太陽系のお話をしたときに、太陽の温度について触れました。
*****以下引用******
太陽の温度は大体6000Kくらいです。
この6000Kという温度はどうやって測ったのでしょうか。
昼は太陽の光で空が明るいですね。それは太陽からの電磁波の放射は可視光線を含んでいるからです。
太陽からの電磁波の分布は、大体こんな感じです。
この曲線が極大となる(波長λで微分して0となる)のは、λ=0.5μmのところです。
0.5μmの電磁波は青色の光です。
太陽だけでなく、一般的によく放射する物体は入射してきた放射をよく吸収します。(キルヒホッフの法則)
またプランクによれば、あらゆる物体はその物体の温度や性質によって、放射する電磁波のエネルギーが決まっています。
プランクは、黒体(入射された放射を全て吸収する物体)から放射されるエネルギーを理論的にこのように表しました。
さらに、エネルギーが最大となる波長は、
つまり、高温の物体ほど放射するエネルギーがピークとなる波長が短いということです。この法則はウィーンにより発見されました。
このようなことから、太陽の温度が6000Kというのがわかるのです。
********************
色温度と実効温度
これは、観測された波長の長さから太陽の温度を求めたもので色温度と言います。
一方、太陽定数を使って太陽の表面での放射強度からも太陽の温度を求めることができます。温度と放射強度の関係式(ステファン・ボルツマンの法則)から太陽の温度を割り出します。この温度を実効温度と言い、色温度と実効温度には少し乖離があります。
それは、太陽の光球が固体ではなく、固体の外側には太陽大気があって放射過程が複雑だからです。
地球の放射平衡
大気の存在しない真空の地球表面では、1秒あたりに地球が受け取る太陽放射量と、射出する地球放射量とが釣り合い、放射平衡が成り立つと考えられています。
この関係を使うと、地球に大気がなかったときの地球の放射平衡温度を知ることができます。
地球に大気がなかったら、激寒なんですね。
というのも地球大気には温室効果があります。
温室効果
1年を通して地球全体で平均した単位面積当たりの放射エネルギー輸送量を図で描いたのが、こちらです。↓
太陽からの放射は、対流圏に到達する前に紫外線がオゾンにより吸収されます。
大気上端で観測される放射の約20%は大気中の水蒸気やオゾン・酸素分子によって吸収されます。大気は透明であり光を通しますが、これは太陽からの放射のうち可視光の進行は妨げないということです。この20%の吸収というのは、可視光以外の波長の電磁波(主に赤外線)を吸収しています。
したがって地表に到達する放射の大部分は可視光です。温められた地表は赤外線の放射を強めます。この赤外線が大気中の水蒸気に吸収され、大気を温めます。
ある波長の電磁波をよく吸収する物質は、その波長の電磁波をよく放射するという性質があります。(キルヒホッフの法則)
水蒸気は多くの波長の赤外線をよく吸収し、赤外線をよく放射します。ですから、大気は地表からの赤外放射を吸収する一方で、温められた大気は赤外線を放射しているのです。この大気からの放射は、一部宇宙へと逃げていきますが、多くはまた地表に向かい、再び地表を温めます。
これが大気の温室効果です。
つまり、大気があることによって、大気や地表の温度が高く保たれているんですね。
****************
今回は大気の放射についてまとめてみました。
文章を書くって難しいですね笑
厳密には説明できていないと思いますので、また加筆修正するかもしれません。
次回は大気の運動についてお話したいと思います。
運動方程式から出発して、風を語りたいと思います!
力学は割と好きなんで、楽しみです🐧
大気の放射①光と物質
最近は空を撮るのにハマっています。
この写真、太陽の周りの雲が虹色になっているのおわかりいただけますか?
あからさまじゃないのでわかりにくいですが、このような雲を彩雲と言います。
以前もご紹介した通り、太陽の光はこのように↓可視光の波長をカバーしています。
私たちが色々なものの色を認識するとき、例えばりんごを見るとき、白色光(太陽光)がりんごに入射し、白色光のうち赤色に相当する波長の光が反射されて私たちはりんごが赤いと認識するんですね。
彩雲というのは、雲の中の水滴に入射したが太陽光を回折して、雲が彩られて見える現象です。
こんな感じです。
このように、私たちは太陽からの放射に左右されて生きています。
前回までは降水過程のお話をまとめていましたが、今回からは太陽放射がどのように気象に関わっているのかを勉強をしていきたいと思います。
せっかく彩雲の話をしたので、まず目に見える太陽の光の話をしたいと思います。
光は粒子であり、波でもあるのですが( 粒子と波動の二重性 - Wikipedia )
光を物質に当てると、どうなるか?ということをちょっと紹介します。
といっても散乱とか結構難しいんですよね。電磁気(マクスウェル方程式)を理解しなくちゃいけなくて…そして結局、量子力学という難しい世界に足を踏み入れてしまうことになる…
なのでここでは深入りせずに、もやっとしたままですが気象予報士試験の勉強に必要な程度でまとめて生きます。
まず、光が物質に当たったとき、原子レベルでどんなことが起こっているのかちょっとだけ説明したいと思います。
原子のエネルギーはとびとびの値をとります。(定常状態)
原子の中の電子はそれぞれに応じた半径の軌道を持っていて、原子からの光の出入りは電子のその軌道の移動によります。(エネルギー状態の高いところから低いところへ移動するとき光を放出し、エネルギー状態の低いところから高いところへ移動するとき光を吸収する)
物質によって、光に当てられたときの波長の長さが違うというのは、炎色反応でよくわかります。(リアカーなきケー村 Li赤Na黄K紫)
熱せられることによって物質の持つエネルギーが基底状態(一番低い状態)になって、その差が放出されたものを私たちは見ているんですね。
さてちょっと難しい話になりましたが、ここからは具体的に空が青く見える理由や夕焼けや虹など具体的に話して行きたいと思います。
太陽の光(電磁波)が、原子や分子やその他空気中に浮遊するエーロゾルにぶつかると、粒子を中心として二次的な電磁波が生じ、周囲に広がります。このことを散乱といいます。
空が青く見えたり、雲が白く見えるのは光が散乱しているからなんです。
散乱の仕方は、入射波の波長と物質の大きさの関係によって違います。
空が青く見えるのは、太陽光を大気が散乱しているからです。(もし大気がなかったら、太陽の方向だけが明るく見えて他は真っ暗になる)
レイリー散乱では、電磁波の波長が短いほど(つまり入射波の放射エネルギーが高いほど)散乱強度が強くなります。可視光の中で一番波長の短いのは紫じゃん!と思いますが、紫は私の目に届く前に散乱されすぎて弱くなっており、空は青色に見えます。
夕焼けが赤く見えるのも、レイリー散乱で説明できます。
空が紫色に見えないのと同じような理屈です。夕方には太陽光が大気中を長く入射するため、地表に届く前に紫色や青色のような波長の短い光は散乱されてしまっていているから、赤く見えるんですね(ちょっと乱暴な説明だなあ…苦笑)
レイリー散乱の特徴は、もう1つあります。
それは、散乱光が入射光と同じ方向で強く、直交する方向で弱くなるということです。
このように、電磁波がある特定の方向に振動することを偏光と言います。
私たちの生活の中で太陽の散乱光の偏光特性を実感できるものとして、カメラの偏光フィルターがあります。偏光フィルターは特定の方向に振動する光のみを通すので、その方向を青色の光が偏光する方向と合わせると、空をより青く撮ることができます。
(この辺は理解が浅く、自信ないです…。電磁波とは何か?ということからちゃんとしっかり勉強すると、放射マスターになれるでしょう!)
②ミー散乱
雲が白く見えるのは、ミー散乱のおかげです。
雲は大気中に浮かぶ水滴や氷晶の集まりですから、原子や分子よりもずいぶん大きいですよね。
そのため、散乱の仕方はレイリー散乱とは異なります。
ミー散乱の強度は、電磁波の波長にあまり依存しません。
太陽光に含まれるあらゆる波長の可視光線を散乱するので雲は白く見えます。
③幾何光学的な電磁波の進行
雨粒や氷晶は雲粒よりもさらに大きいです。これらに太陽光が入射したとき、可視光線は幾何光学的な屈折や反射を行います。
******************
おそらく試験の問題を解くのはこの分野ってそんなに難しくないみたいなのですが、ちゃんと理解しようとすると沼にはまってしまいますね。私の知識は穴だらけです。
次回は太陽放射がどんな風に私たちの地球を温めているかということを中心にやっていきたいと思います🌞
降水過程③冷たい雨
今回は冷たい雨についてです。
前回のおさらい
雲粒は水蒸気の拡散によって凝結するが、それだけでは雨雲にまで成長できない。大きい雲粒が小さな雲粒を併合することで成長し、雨粒と言えるサイズに成長する。併合過程には、空気の粘性による抵抗力が関わっている。空気抵抗が重力と反対の向きに働くおかげで、あるところでそれらの力が釣り合い、それ以降は加速度0の一定の速度(これを終端速度という)で落下する。釣り合いにより、大きい雲粒の方が小さい雲粒よりも終端速度が大きくなる(終端速度は半径の二乗に比例)ので、大きい雲粒が小さい雲粒を併合することができる。
このような過程で、0℃以上の雲から降る雨を暖かい雨という。
一方、雲の中で氷の粒が大きく成長し、落下する際に溶けて雨粒となる雨を冷たい雨という。
雲の中では、氷点下になれば必ず雲粒が凍るわけではなく、0℃以下でも液体の状態を保つ。しかし−40℃以下にもなれば、雲の中には過冷却状態の水滴は存在せず、全て氷晶となっている。
以上のようなことをご紹介しました。(要約なのに長い...苦笑)
今回は、冷たい雨についてもう少し勉強すべく、氷晶の成長過程をまとめていきたいと思います。
氷晶の自己増殖
雲のなかの氷晶核の数は、氷晶よりも過冷却水滴よりも少ないです。
氷晶は氷晶核の助けを借りて生成されるものなのに、どうしてなのでしょうか。
その理由として、氷晶自身に自己増殖作用があるのではと考えられています。
・氷晶は壊れやすく、落下の際に分裂する
・雲のなかの過冷却水滴が凍結するときに氷のかけらが飛び散り、それが氷晶核となっている
以上のような作用があると考えられています。
氷晶の凝結過程
また、氷晶の昇華による成長は凝結による成長と同様に非常に遅いのですが、氷に対する飽和水蒸気圧と水に対する飽和水蒸気圧の違い(水>氷)から、氷晶と過冷却水滴が混在する雲の中では、氷晶が独占的に成長します。
(氷に対する飽和水蒸気圧<水に対する飽和水蒸気圧)
氷晶がどんどん成長している間に、過冷却水滴は蒸発していき小さくなってしまいます。そのおかげで氷晶の独占的な成長が続くのです。
凝集による氷晶の成長
また、過冷却水滴と氷晶が衝突すると水滴は氷晶にくっつき質量が増します。この過程をライミングと言います。その結果できる氷粒子の形は実に様々です。
どんどん捕捉して大きくなって、あられやひょうになります。
こうして成長したあられや雪片が空気中を落下する際に溶けて雨粒となったのが冷たい雨です。日本で降る雨の約80%がこのような雨であるとのことです。
***********************
この分野をまとめるのにすごく時間がかかり、なんだか歯切れが悪いのは、私の理解があまり進んでいないということかもしれません。
なんとなく一般気象学をなぞっただけという感じです。
このような雲の本をお供に、空を眺めるようなことも気象の勉強ですよね!
ぼちぼち頑張りたいと思います⛅️🌈
降水過程②併合過程
最近は夕焼けがとても綺麗です。秋ですね〜(これは一昨日の写真)
さて、降水過程の続きです。
■前回のおさらい
空気塊が上昇し、相対湿度が100%以上になるとき、空気中に浮遊しているエーロゾルが核となって、雲粒ができる。
特に、海のしぶきが蒸発した海塩粒子はその化学的性質(吸湿性)と大きさのおかげで成長しやすい。
凝結過程による雲粒の成長は質量保存則により、時間を関数として記述できる。
それにより水滴の増加量は半径×過飽和度に比例することがわかった。
このようなことを紹介しました。
今回は、雲粒が雨粒に成長するために必要なもう一段階の過程「併合過程」についてです。
雲粒の併合過程
大きい雲の粒が小さい粒を併合することでより大きくなります。
大きな雲粒の方が速く落下するので、小さな雲粒と衝突して合体して大きくなります。
・・・あれ?物が落下するとき、物体の落下速度は物体の質量には関係ないって習ったぞ?と思うかもしれません。確かに、真空中ではそうです。
しかし、実際は空気があって、空気は粘性を持っているので落下速度は水滴の大きさで違います。(ここで落下と逆向きに働く力を空気抵抗と言います。本当はこの辺はナビエストークス方程式をちゃんと勉強した方がいいと思うけど、ちょっとスルーします笑)
雲粒の終端速度
ηは粘性係数です。どれだけ粘り気があるかを表す係数ですね。
この速度の違いによって併合が実現します。
併合過程による水滴の成長
このように、併合により急激に成長します。
暖かい雨
こうして降る雨を、暖かい雨と言います。
一度も氷にならずに降る雨を暖かい雨というのに対して、雲の中で氷の粒が大きく成長し落下する際に溶けて雨粒となる雨を冷たい雨と言います。
冷たい雨
日本で降る雨の80%はこの冷たい雨です。
氷晶と過冷却
氷でできた雲の粒を氷晶と言います。
大気の温度が0℃以下で、かつ水蒸気の量が氷面に対して飽和していれば、大気中に氷晶ができそうな気がします。
しかし、水滴はとても小さいと凍りにくく分裂もしやすいので、0℃以下になってもなかなか凍らず、液体として存在します。この状態を過冷却と言います。
過冷却状態はとても不安定でちょっとした刺激があると一気に凍ったり、何か不純物があるとそれを核にして凍り出します。その不純物(異物質の微粒子)のことを氷晶核と言います。
氷晶のほとんどは、氷晶核の助けを借りて生成されますが、 –40℃以下では不純物の助けを借りずとも、過冷却状態を維持することができず、雲粒も凍結します。
雲頂の温度が0℃〜−4℃であるような雲はほとんどすべて過冷却の水滴で構成されているので、飛行機で突っ込んでしまうと危険です。過冷却という状態は非常に不安定で少しでも刺激を加えると凍結してしまうからです。
↑積乱雲内部の上昇気流によって生じる氷晶と水滴の分布(気象学入門より)です。
********************
ちょっと長くなったので、今回はこの辺で。
次回もう少し冷たい雨について書きたいと思います。
専門と実技の勉強もちょっと進めなければ〜
降水過程①凝結過程
今日は降水過程のお話をしたいと思います。
雲ができて、雨が降るまでの過程をお話します。
雲ができるまで
湿った空気塊が上昇すると、気圧が下がるので膨張し、温度が下がります。
すると、あるところで相対湿度が100%に達します。
その時に何か核になるようなものがあれば、それを中心にして雲粒や氷粒ができます。その核となるものをエーロゾルと言います。
英語で書くとaerosol
sol(ゾル)は、gelの対義語です。
ゾルとは・・・コロイド粒子が液体中に分散していて流動性のあるもの。
コロイドって・・・?っと思ったらこちらへ↓
家で氷を作る時、その氷は不純物を核とします。
不純物のない水をゆっくり冷却すると、0℃になっても氷にならず、この状態の水を過冷却水と言います。
その話に似ているのですが、大気中の原子や分子よりも大きい粒子が大気中で分散しているんですね。それがエーロゾルです。それを中心にして雲ができます。
エーロゾルには、
・陸地の地表から吹き上げられた土壌粒子
・海面のしぶきから形成された海塩粒子
・火山噴火により大気中に放出された粒子
そのほかいろんな粒子があります。
大きさも様々で、
・半径0.005~0.2μmのエイトケン核
・半径0.2~1μmの大核
・半径1μm以上の巨大核
があります。
大気中には色々な化学成分と大きさを持つ微粒子が存在しているんですね。
その中でも特に注目したいのは、海面のしぶきから形成された海塩の粒子です。
なぜなら他のエーロゾルに比べて半径が大きく、水に溶けやすいからです。
水に溶けやすい、吸湿性が高いということは、その表面は水の膜で覆われます。
水滴と、平面の水がどのような相対湿度で平衡になりうるかということを色々な大きさの水滴で調べたら、こういうグラフに書けるそうです。↓
【平面な水に対して平衡状態にある純粋な水の水滴の半径と相対湿度の関係(5℃の場合)】
簡単に言い換えてみると、
例えば、0.3μmの吸湿性の良いエーロゾルがあると、わずか0.4%の過飽和度で平衡状態になり、それ以上の過飽和度であればさらに水蒸気が凝結してより大きい水滴になります。
海塩粒子は海のしぶきが蒸発したあとに残ったものなので、だいたい塩(NaCl)ですよね。NaClは水によく溶けます。
一般に化学物質が溶けた水(溶液)に対する飽和水蒸気圧は純粋な水のそれより低いという性質があります。(ラウールの法則)
ちなみに、氷と比較しても水に対する飽和水蒸気圧は高いです。
湿った空気塊を上昇させて過飽和の状態に達した時、吸湿性の良いエーロゾルが空気中に浮遊していると、エーロゾルは水蒸気を凝結させるための核(凝結核)の役割をしてくれて、水滴ができます。(雲粒)
出来立ての雲の中の雲粒は半径が1〜20μm程度です。(赤血球と同じくらいの大きさとのこと ※Wikipedia調べ)
そのまま空気塊が上昇すると、空気は絶えず過飽和の状態になり、雲粒が凝結過程により成長します。
雲粒の凝結過程
雲粒の凝結過程によって時間とともにどう成長するか計算します。
降水過程の分野は、気象の教科書には結構簡単に書いてあるのですが、その土台には流体力学があって、これはちゃんと理解しようと思うとすごく難しいです。
あんまり深入りはせず、分かりそうなところは勉強していきたいと思います。
単位時間あたりの
①水滴の質量数Mの増大量=②水蒸気が水滴に吸収された質量数
という質量保存を使って計算します。
①水滴の質量数Mの増大量
これは割と簡単に式にすることができます。
水滴には、液体の表面積を最小にしようとする力(表面張力)が働くので水滴を半径rの球として式を立てると、
②水蒸気が水滴に吸収された質量数
これを考えるには「拡散」についての勉強が必要です。
濃い方から薄い方へ流れるので、その流れはベクトルで表すとこのようになります。
勾配(gradient)が出てきて難しい感じがしますが、何となくイメージできるでしょうか。(この辺は大学で習う数学です・・・)
マイナスの意味は、拙い言葉で言うと、後ろ引く前をしたときのマイナスです(苦笑)
濃度の勾配は濃い方を向いていますが、濃い方から薄い方というベクトルは薄い方を向いていますからマイナスがついているんですね。
フィック の法則に基づいて水蒸気の拡散量を考えると、
①=②なので、
**********************
降水過程を1記事にまとめようと思ったけど、
長くなりすぎたので、ここら辺で一旦切りたいと思います。
次回は雨粒が併合して成長する過程から勉強します!
気象に関する物理量について考える
こんにちは。
またまた台風接近の週末。風が弱まるまで家で待機です。
さて、前回まで熱力学の分野で基本的な法則
☁︎静力学平衡の式
☁︎状態方程式
☁︎熱力学第一法則
を使って、
気象を表す物理量をいくつかご紹介しました。
☀︎相対湿度
☀︎露点温度
☀︎混合比
☀︎比湿
☀︎温位
☀︎相当温位
など
今回は、過去問を使ってこれらの物理量を考察していきたいと思います!
①未飽和の湿潤空気塊を、一定の圧力のもとで凝結を伴わずに飽和するまで温度を下げた場合、どんな値が保存される?
この過程は、室内の温度をエアコンで下げたような感じでしょうか。
温度が下がることによって、飽和水蒸気圧が下がります。
気圧が一定で温度が下がるということは、外部から熱が加えられている(奪われている
)ということです。
圧力は変化しないので、相対湿度は高くなります。
私の家の洗濯機は乾燥機能がついているけど、自動乾燥すると湿っていることが多いです。ピーっと音が鳴ってからすぐに蓋を開ければいいんですけど、しばらく放っておくと湿っているんです。多分音が鳴ったときは一応乾いているんだけど、そのときの洗濯槽の中の温度って室温に比べて高いですよね。時間が経つにつれ、洗濯槽内の空気の温度が下がるために飽和水蒸気圧が下がるから湿っちゃうんですね〜 特に吸水性の良いタオルとか・・・
混合比(水蒸気量と乾燥空気量の比)は、凝結しないので変化なしです。
②下図のように空気塊が2000mの山を西から東に越えるとき(フェーン現象)
断熱変化では空気塊の混合比が保存されることに注目して、東側の山麓で空気塊の温度を求めよ、とのことです。
こういうときに混合比を使うんですね〜
最初に持っていた水蒸気量の30%を失うけれど、乾燥空気は減ったり増えたりしないので、混合比が7割になる、とのことです。
これを使って計算すると、
凝結によって潜熱が放出され、山の東側に暖かく湿った空気が流れるという過程です。
気象予報士の試験では電卓が使えないので、その辺鍛えていかなくては〜)
③未飽和の湿潤空気塊を持ち上げ凝結高度まで断熱的に上昇させた場合、どんな値が保存される?
④飽和している湿潤空気塊を、凝結させながら断熱的に冷却した場合、どんな値が保存される?
相対湿度は100%から変わらず保存されます。あと相当温位も保存されますね。(エマグラムの使いどころがわかって来たような〜)
**********************
今回は以上。問題演習の復習でした😄
昨日は8月に実施された気象予報士試験の合格発表だったみたいです。
私は勉強を始めてから日が浅く受験しませんでしたが、今回の試験で部分合格された方たちと来年1月に受験することになるので、身が引き締まる思いです。
一通り勉強された方たちの中で受験するのだということを踏まえて、私はもっと勉強しないとと思います^^;
大気の熱力学④エマグラム
週末は大体勉強カフェで勉強しているのですが、今日は台風が接近していることもあってお家でまったり勉強〜♪
※勉強カフェとは
大人のための自習室です。いつもお世話になっています☕️
今回は、気象で扱う物理量をグラフで示していきます。
■前回のおさらい
①熱力学第一法則とは
エネルギーとは仕事に変換できるもの。外部からエネルギーが与えられると、それを仕事に変換する。その残りが内部エネルギー。内部エネルギーは温度だけに依存する。
②乾燥断熱過程と湿潤断熱過程
熱力学第一法則や静力学平衡の式、状態方程式を用いて、
・乾燥断熱減率
・温位
・湿潤断熱減率
・相当温位
を導出した。
③大気の水分を表す物理量
・相対湿度
・混合比
・比湿
・露点温度
を紹介した。
今回はこれらをエマグラムという図にしていきます。
↑らくらく突破 気象予報士 かんたん合格テキスト 学科一般 P148より
天気の解析に使うグラフです。
横軸が気温、縦軸が高度の代わりに気圧の自然対数をとってあります。
あらかじめ、
▼乾燥断熱線
▼湿潤断熱線
▼等飽和混合比線
が書かれてあります。
混合比とは、このような物理量でした。
飽和混合比は、このようになります。
y=ax+bという関数をy-xグラフに描くのは簡単ですよね。
エマグラムはそのようなグラフとはちょっと違います。
エマグラムは、縦軸も横軸もパラメーターになっていて、点で結果を表しています。(こういうグラフを散布図とか分布図と言います)
ここが難しいポイントだと思います。
飽和とは、相対湿度が100%になる状態のことであり、そのときの温度が露点温度です。ですから、等飽和混合比線は、気圧変化に対応した露点温度であると解釈できます。同じ気温であれば、気圧が低いほど露点温度は高いということです。
ある地点ある高度における空気塊に関して、気温と気圧がわかっていれば、エマグラムを使うことにより、
▼温位
▼露点温度
▼相当温位
▼湿球温位
がわかります。
エマグラムを使って、空気塊の気温減率と安定性について考えてみます。
安定性については、こちらを参考に↓
対流の起こりにくさ=安定度です。
少し持ち上げた空気塊がさらに上昇しようとするとき→不安定
下降しようとするとき→安定
空気塊だけでなくて、周りの空気も大気層が変化する場合、どうなるでしょうか。
条件付不安定であるが飽和していない大気中の空気塊を考えます。
対流の起こりやすさを示す指標としてCAPE(Convective Available Potential Energt)があります。↑の水色で塗った面積がそれです。この面積が大きいほど対流は活発になりやすいと言えます。