気象ゼミごっこ

気象予報士試験に向けて、大学のゼミみたいに勉強するブログ

大気の大規模な運動③偏西風波動と温帯低気圧

前々回の話から、今日は中緯度の熱輸送についてお話ししたいと思います。

 

meteorolo.hatenablog.com

 

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ハドレー循環では赤道付近の暖かく湿った空気が上昇して高緯度側に移動し下降していて、わかりやすく南北に熱を輸送していますが(直接循環)、中緯度でのフェレル循環では低緯度側に下降流があり高緯度側に上昇流があるため、一見すると熱がうまく循環しているように思えません。

中緯度で水平温度傾度が強くなると大気の流れが蛇行し、偏西風も蛇行するという話を前々回にしました。この蛇行により熱の輸送がなされています。

 

風の流れに曲率があるときに渦度が生じますが、偏西風に蛇行があるときにはこのよう偏西風の蛇行に対応して低気圧性の渦と高気圧性の渦ができます。

 

▼渦度

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気象庁ホームページより 

H30.12.15(12UTC) 北半球500hPa高度・気温天気図(AUXN50)

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等高度線が波打っていますね。このように、中緯度帯の長さ約3万kmに対し5つくらいの波があって、この波長数千kmの偏西風波動が日々の天気の変化に大きく関わっています。

偏西風の波動は温度の水平傾度が大きくなることにより起こると言いましたが、その蛇行によって寒気と暖気の入れ替わりが起こっています。

 

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一般的に温度(密度)の違う流体がぶつかるとどうなるのかということをまず考えてみます。このように冷たい水と暖かい水が入った箱のようなものがあって、仕切りをはずしてみるとどうなるか?
 

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密度の大きい冷たい水が下に潜り込もうとします。

お風呂に入っているときを想像するとわかりやすいですが、お風呂のお湯が冷えてしまっているとき、特に底の方に冷たい水が溜まっていますよね。

このように移動するとき、位置エネルギー(potencial energy)を使っています。

位置エネルギーが運動エネルギーに使われている分だけ小さくなっています。)

これと同じことがもっと大きいスケール(総観規模)で起こっています。

 

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500hPaで気圧の谷(トラフ)には正渦度の極大域があって、風が収束しています。風が収束すると、そこから地上に向かって下降する流れができます。

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※発散とp速度、渦度に関しては以前にご紹介しました。

 

meteorolo.hatenablog.com

 

地上に寒気が潜り込んで、下降流の下では高気圧となります。

一方、500hPaにおいて気圧の尾根(リッジ)となっているところでは、風が発散していて、地上からの暖かい風が上昇しています。

これが発達する温帯低気圧の構造なのですが、地上の低気圧の中心とそれに対応する500hPaの低気圧の中心を直線で結ぶと、上空にいくほど西に傾いた線が書けます。

これが直線だったらどうなるでしょうか?

地上で低気圧の中心に向かって吹き込む風が上昇しても、その先(上空での低気圧の中心)に空気がたまっていくので、そこはだんだんと低気圧ではなくなります。

 

温帯低気圧気象衛星でみると、高気圧性の曲率を持った雲域(バルジ)がみられます。

低気圧の西側には暗域がみられますね。これは寒気の南下と下降が強いことを示しています。(水蒸気画像でこの暗域が暗化するか明化するかの時間変化を観察することにより、低気圧が発達するかどうかを推測することができます。)

 

気象衛星センターホームページより

気象衛星センター | バルジ

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これがよく地上天気図で見かける温帯低気圧です。

気象庁ホームページより 

鹿児島付近に低気圧の中心がありますね。このように前線を伴う低気圧を温帯低気圧と言います。

http://www.jma.go.jp/jp/g3/images/jp_c/18121618.png

前線の話をしていませんでしたが、前線は「地上で水平温度傾度が特に大きくなっている等温線集中帯の暖気側に沿ったライン」と定義されています。

「温度傾度の不連続線」とも言い換えることができます。ただし、九州(西日本)以南の梅雨前線は水平温度傾度がそれほど大きくなく、水蒸気密度の傾度の大きいところに前線を書きます。(等温度線の集中帯ではなく等相当温位線の集中帯に着目します。梅雨についてはまた今度!)

前線があるから、低気圧が起こるわけですね。

 

このように温度傾度が大きくなると偏西風が蛇行し、それに伴って温帯低気圧ができます。温帯低気圧によって、南北に熱を輸送しています。

 

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ちょっと雑になってしまいましたが、今回はこの辺で。

読者になってくれた方もいて、とても嬉しいです。感謝しています。

一方、私は試験が近づくにつれてだんだんと試験用の勉強をしなければ〜という焦りはありつつも、何でこの試験を受けるんだっけ?というモチベーションの揺らぎみたいなものもあって、あんまり身が入っていません。

純粋に知りたくて勉強しているだけなら、試験を受ける必要もないわけで。

もう少し頑張って、ここまで勉強したんだから合格して称号を得ようよ、と思えるくらいになれたらいいんですけど。

合格後のことをイメージし辛く、モチベーションの維持が難しいということがこの試験の難易度をさらに上げているのかもしれませんね。

次回はもうちょっと前線について(私もインプットしながら)ここで発表できたらと思っています。