第51回気象予報士試験 学科一般分野 復習②
試験まであと半年もあると思って気象の勉強サボってますが、ぼちぼち復習の続きをしていきたいと思います。
学科一般の前半はこちら↓
今回は問8から見直していきます。
- 問8 傾圧大気について
- 問9 バックビルディングに関して
- 問10 100年スケールでの気候変動について
- 問11 中層大気について
- 問12 災害対策基本法について
- 問13 予報業務の許可について
- 問14 気象予報士について
- 問15 予報業務の許可を受けた者について
問8 傾圧大気について
傾圧大気とは、等温面と等圧面が交わるような大気のことです。
高層天気図にはいつも等温線がかかれていて、高層天気図は等圧面にかかれているので、大気はいつも傾圧であると言えます。
(a)これは温度風のことですね。
中高緯度の傾圧大気では、鉛直方向に地衡風のシアーが存在する。
➡︎これは正しいです。
傾圧大気というのは等圧面で温度差があるということなので、高度が増すごとに気圧差が大きくなります。
(b)傾圧不安定波の東西方向の波長スケール
▼気象庁ホームページより
H30.12.15(12UTC) 北半球500hPa高度・気温天気図(AUXN50)
このように、中緯度帯の長さ約3万kmに対し5つくらいの波があって、この波長数千kmの偏西風波動が、南北の温度差による有効位置エネルギーを運動エネルギーに変換させています。
➡︎温帯低気圧
(c)大気の傾圧性が大きくなって増大するのはどんなエネルギーか
温度差(密度差)によって(有効)位置エネルギーが増大し、その位置エネルギーが運動エネルギーに変換されて、温度差を解消しようとします。
問9 バックビルディングに関して
この問題は集中豪雨にも直結するトピックなので、正解できたらよかったんですけど、間違えてしまいました。
気象庁の資料で、関連するものがこちらです↓
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/yohkens/20/chapter6.pdf
一般気象学に倣ってまずは簡単のために、一般風の風向は一定で風速に鉛直シアがあるような場合を考えると、降水セルの振る舞いはどうなるか考えてみます。
移動中の降水セルは中層の風で流され、上層の風と下層の風は相対的に逆向きに吹きます。
成熟した親雲の下には、降水によって冷たい空気が引きずり降ろされていて(冷気プール)、その空気が下層の風とぶつかる(ガストフロント)ことによって、新たな雲が生まれます。この新しい雲(子雲)は湿った下層の風から水蒸気を吸い取って、成長します。親雲の方には水蒸気はいかないので、衰弱します。
個々の積乱雲の寿命は30〜60分程度ですが、このように一般風に鉛直シアがあって、大気の状態が不安定であるときに、組織的に自己増殖していきます。
日本での集中豪雨は大体がこのようにして線状降水帯を形成しているんだそうです。
問題文を見てみると…
(a) 個々の降水セルの寿命は30〜60分程度であり、中層風の方向に移動しているので、誤
(b) 一般風の鉛直シアがあるときに見られるので、誤
(一般風の風向が一定で風速にシアがある場合も組織的に増殖するが、風向が一定である必要はない。むしろ風向にもシアがある方がより多くの水蒸気を継続的に得ることができる。)
(c) 新しい降水セルが形成されるのは、降水セルに相対的な下層風の風上側なので誤
(d) 一般風の風向は、まず高度により一定とは限らないので誤。降水域の進行方向は、新しい降水セルが生まれる向き(下層風の向き)と中層風の向きによる。
問10 100年スケールでの気候変動について
(a)100年間での地上気温の上昇は全球平均すると、どの程度か?
気象庁のホームページを訪問してみると、
このようなグラフが載っていて、100年間に0.7℃ほど上昇しています。
(b) 日本での年平均気温はどうなっているか?
気象庁ホームページへ↓
地球全体で一様に温度が上昇しているのではなくて、このように地域によっては気温が下降する時期もあります。
エルニーニョ(ラニーニャ)現象や火山の爆発も影響しますから、
日本で年平均した気温を5年間で移動平均すると過去100年で下降する期間は見られないというのは誤です。
(c) 火山爆発による日傘効果について
火山が爆発するとき、二酸化硫黄や火山灰が噴出します。
火山灰は降水などによって取り除かれますが、二酸化硫黄は硫酸エアロゾルとなって成層圏に2〜3年て停留します。1991年のピナツボ火山(フィルピン)の爆発というのが特に教材でよく見かけるもので、これによってそこから数年間の日本での低温傾向が説明されています。
(d) まずは言葉の定義から…
熱帯夜・・・最低気温が25℃以上の日
真夏日・・・最高気温が30℃以上の日
冬日 ・・・最低気温が0℃以下の日
気象庁の資料でこんなものを発見しました↓
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/himr/2011/chapter2.pdf
問題の答えはこの中に書いてあるのですが、熱帯夜や冬日の変化傾向の理由として、都市化の影響が大きいと書かれています。
冬日の減少は、高いビルが密集しているところで放射冷却が弱くなること(➡︎ヒートアイランド現象)と関連づけられると正解できたと思います。
問11 中層大気について
①北半球の夏
北極域が高気圧となり、中高緯度では地衡風の関係から東風が卓越
➡︎これは○です。
北半球の夏では、北極域は24時間太陽の光を照射するので(白夜)、オゾンが紫外線に吸収、加熱されます。その結果、成層圏の気温は北極に近くほど高温になります。
北半球の対流圏の気温は極ほど低くなっていて、温度風は西風ですが、成層圏では逆に極ほど気温が高いということで東風になります。
では、北半球の冬はどうでしょうか。
南半球の冬では、中層大気を等圧面天気図をみると同心円状になっていますが、北半球の冬では円が崩れています。これは北半球には大きな山があり(ロッキー山脈やヒマラヤ山脈)、対流圏で偏西風が山岳と衝突することによって、また大陸と海洋での大気の加熱割合の違いも影響してロスビー波が励起されます。
このうち、惑星自身の大きさに匹敵する(波数1〜3)波長をもつをプラネタリー波と言います。
夏は成層圏で東風となっているのでこの波が侵入できませんが、冬は対流圏と同じく西風なのでプラネタリー波は成層圏に伝播されます。
その結果、 プラネタリー波が極渦を崩壊させ成層圏突然昇温を引き起こすことがあります。
(端折りすぎですがw)
問題の答えは、(a)、(b)、(e)が正しくて3個でしょう。
続いて、法律問題です。
問12 災害対策基本法について
(a) 防災の定義です。
(c) 防災計画について
災害対策基本法では、防災計画を作成することが定められています。
防災計画は、3つあり、
①防災基本計画・・・内閣府に置かれ内閣総理大臣を会長とする中央防災会議で作成
②防災業務計画・・・指定行政機関及び指定公共機関が作成
③地域防災計画・・・地方公共団体が作成
(b)防災に関する組織について
防災計画の作成・実施のための組織が災害基本法で定められています。
①中央防災会議
防災基本計画の作成・実施のために、内閣府には内閣総理大臣を会長とする中央防災会議が置かれている。
②都道府県防災会議
都道府県地域防災計画の作成・実施のために、都道府県には知事を会長とする都道府県防災会議が置かれている。
(d)災害対策本部について
災害対策本部を設置できるのは、都道府県知事と市町村長です。
災害が発生、またはその恐れがあるときに災害対策本部を設置できます。
問13 予報業務の許可について
(a)気象庁以外の者が予報業務を行おうとする場合は気象庁長官の許可が必要です。
(b)警報事項の伝達について
予報業務の許可の基準として、当該予報業務の目的と範囲に関わる気象庁の警報事項を迅速に受け取ることができる施設・要員を有することが挙げられています。
警報事項を利用者に迅速に伝達することは努力義務として定められています。
(c)予報業務の取り消し
気象業務法やそれに基づく命令に違反したときには、気象庁長官は業務の停止を命じ、又は許可の取り消しができます。
問14 気象予報士について
気象予報士試験に合格すると、気象予報士となる資格が得られます。
合格後に気象予報士になるためには、気象庁長官の登録が必要です。
気象庁長官の登録を受けるためには、登録申請書を気象庁長官に提出しなければなりません。また、申請書には気象予報士となる資格を有する証を添付する必要があります。
(a) 気象予報士試験に合格した者は気象予報士となる資格が与えられますが、この資格に期限はありません。一生物です!
(b)気象予報士が気象業務に従事するとき、気象庁長官に報告するのは予報業務を受けた者(雇い主)です。
予報業務の許可を申請する際に、事業所ごとに配置される気象予報士の氏名と登録番号を記載した書類を提出しなければならず、これに変更があると気象庁長官に報告しなければならないとされています。
(c)気象予報士の登録抹消
気象予報士の登録が抹消されるのは
①気象予報士が死亡したとき
②気象業務法により罰金以上の刑に処せられたとき
③登録に偽りやその他不正があったと判明したとき
④試験の合格が取り消されたとき
です。それ以外では登録の抹消はできないので誤です。
問15 予報業務の許可を受けた者について
(a) 予報事項の記録
予報業務を行った者は事業所ごとに、
①予報業務の内容と発表時刻
②気象予報士の氏名
③気象庁の警報事項の利用者への伝達状況
これらを記録して、2年間保存しなけばなりません。
(b)許可を得ていない範囲の予報業務を行った場合
業務を行った気象予報士及び事業者が処罰されます。50万円以下の罰金です。
(c)気象庁の予報を発表することは、予報業務の許可がなくてもできることで、予報業務を行う者がそれをしたところで問題ありません。
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一般の復習は以上です。
改めて自分の回答用紙をみると、本当に緊張していたのか読解ができていなくて失点している問題が多いです😂そして法律はちょっと詰めが甘かったです。
最近は気象予報士試験の勉強に一直線!というより、気象ってデータとして面白いよな〜とか思っています。RDB(リレーショナルデータベース)を仕事で扱っていて、プログラミングの勉強も大学でちょっとやっていたので、気象データを統計的に扱って農業とかそのほかの色んな商売に繋げるんじゃないか、ということで、経済の指標とかも勉強したいな〜アプリとか作りたいな〜と夢が広がるんです。(意識高w)
次回からは専門分野を復習していきますので、また良かったらお付き合いくださいませ〜