大気の大規模な運動③偏西風波動と温帯低気圧
前々回の話から、今日は中緯度の熱輸送についてお話ししたいと思います。
ハドレー循環では赤道付近の暖かく湿った空気が上昇して高緯度側に移動し下降していて、わかりやすく南北に熱を輸送していますが(直接循環)、中緯度でのフェレル循環では低緯度側に下降流があり高緯度側に上昇流があるため、一見すると熱がうまく循環しているように思えません。
中緯度で水平温度傾度が強くなると大気の流れが蛇行し、偏西風も蛇行するという話を前々回にしました。この蛇行により熱の輸送がなされています。
風の流れに曲率があるときに渦度が生じますが、偏西風に蛇行があるときにはこのよう偏西風の蛇行に対応して低気圧性の渦と高気圧性の渦ができます。
▼渦度
▼気象庁ホームページより
H30.12.15(12UTC) 北半球500hPa高度・気温天気図(AUXN50)
等高度線が波打っていますね。このように、中緯度帯の長さ約3万kmに対し5つくらいの波があって、この波長数千kmの偏西風波動が日々の天気の変化に大きく関わっています。
偏西風の波動は温度の水平傾度が大きくなることにより起こると言いましたが、その蛇行によって寒気と暖気の入れ替わりが起こっています。
一般的に温度(密度)の違う流体がぶつかるとどうなるのかということをまず考えてみます。このように冷たい水と暖かい水が入った箱のようなものがあって、仕切りをはずしてみるとどうなるか?
密度の大きい冷たい水が下に潜り込もうとします。
お風呂に入っているときを想像するとわかりやすいですが、お風呂のお湯が冷えてしまっているとき、特に底の方に冷たい水が溜まっていますよね。
このように移動するとき、位置エネルギー(potencial energy)を使っています。
(位置エネルギーが運動エネルギーに使われている分だけ小さくなっています。)
これと同じことがもっと大きいスケール(総観規模)で起こっています。
500hPaで気圧の谷(トラフ)には正渦度の極大域があって、風が収束しています。風が収束すると、そこから地上に向かって下降する流れができます。
※発散とp速度、渦度に関しては以前にご紹介しました。
地上に寒気が潜り込んで、下降流の下では高気圧となります。
一方、500hPaにおいて気圧の尾根(リッジ)となっているところでは、風が発散していて、地上からの暖かい風が上昇しています。
これが発達する温帯低気圧の構造なのですが、地上の低気圧の中心とそれに対応する500hPaの低気圧の中心を直線で結ぶと、上空にいくほど西に傾いた線が書けます。
これが直線だったらどうなるでしょうか?
地上で低気圧の中心に向かって吹き込む風が上昇しても、その先(上空での低気圧の中心)に空気がたまっていくので、そこはだんだんと低気圧ではなくなります。
温帯低気圧を気象衛星でみると、高気圧性の曲率を持った雲域(バルジ)がみられます。
低気圧の西側には暗域がみられますね。これは寒気の南下と下降が強いことを示しています。(水蒸気画像でこの暗域が暗化するか明化するかの時間変化を観察することにより、低気圧が発達するかどうかを推測することができます。)
▼気象衛星センターホームページより
これがよく地上天気図で見かける温帯低気圧です。
▼気象庁ホームページより
鹿児島付近に低気圧の中心がありますね。このように前線を伴う低気圧を温帯低気圧と言います。
前線の話をしていませんでしたが、前線は「地上で水平温度傾度が特に大きくなっている等温線集中帯の暖気側に沿ったライン」と定義されています。
「温度傾度の不連続線」とも言い換えることができます。ただし、九州(西日本)以南の梅雨前線は水平温度傾度がそれほど大きくなく、水蒸気密度の傾度の大きいところに前線を書きます。(等温度線の集中帯ではなく等相当温位線の集中帯に着目します。梅雨についてはまた今度!)
前線があるから、低気圧が起こるわけですね。
このように温度傾度が大きくなると偏西風が蛇行し、それに伴って温帯低気圧ができます。温帯低気圧によって、南北に熱を輸送しています。
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ちょっと雑になってしまいましたが、今回はこの辺で。
読者になってくれた方もいて、とても嬉しいです。感謝しています。
一方、私は試験が近づくにつれてだんだんと試験用の勉強をしなければ〜という焦りはありつつも、何でこの試験を受けるんだっけ?というモチベーションの揺らぎみたいなものもあって、あんまり身が入っていません。
純粋に知りたくて勉強しているだけなら、試験を受ける必要もないわけで。
もう少し頑張って、ここまで勉強したんだから合格して称号を得ようよ、と思えるくらいになれたらいいんですけど。
合格後のことをイメージし辛く、モチベーションの維持が難しいということがこの試験の難易度をさらに上げているのかもしれませんね。
次回はもうちょっと前線について(私もインプットしながら)ここで発表できたらと思っています。
大規模な大気の運動②温度風
前回大気の大循環の話をして、一気に一般の内容をまとめたい!という気持ちが高まってきていますので、この勢いでまとめていきたいと思います。
ブログの読者対象というのがブレブレな気もしますが、寝ぼけている自分が理解できるくらいの簡単な言葉で説明するのが目標です笑
ひとまず気象の基礎を(それがどこまでなのか、微妙なところですが)一通りご紹介して、それからはランダムに学んだことをアウトプットできればいいな、と思っています。
前回のおさらい
赤道付近では熱が余っていて、極付近では熱が不足しています。
その熱の偏りを解消する働きをしている3つの循環について紹介しました。
ハドレー循環
赤道付近では太陽高度が高いためよく熱せられ、地上付近は相対的に低気圧になる。すると南北から風が収束し上昇、上空で南北へ発散する。
このように直接大気が南北に移動し熱の輸送を行う循環を直接循環という。
フェレル循環
地球は自転しており、高緯度ほどコリオリの力が大きく働いて風の向きが変わる。そのため、ハドレー循環だけで赤道付近の風が極側へ送られることはなく、赤道上空からやってきた空気は緯度25〜30度付近で高緯度側へ進めなくなる。そこで風は収束し下降、地上で高気圧となる。そこで南北に風が発散する。緯度60度付近で高緯度側からの風と低緯度からの風がぶつかり上昇する。
極循環
極付近では大気が冷やされ高気圧となり、下層の冷たい空気が低緯度側に移動する。上空では暖気が極へと向かう循環をしている。
亜熱帯ジェット気流
ハドレー循環とフェレル循環の境では上空ほど西風が強くなっており、この風速の極大域を亜熱帯ジェット気流という。地球が自転しており球形であることにより、また角運動量が保存されることが亜熱帯ジェット気流の要因である。
寒帯前線ジェット気流
寒帯前線ジェット気流は、上空から下層まで延びる寒帯前線の移動に対応している。
寒帯前線ジェット気流は亜熱帯ジェット気流に比べ蛇行が激しい。夏よりも冬に赤道付近に近く、風速も大きい。出現高度は冬の方が低い。
以上のようなことをお話ししました。
今回は偏西風の話から温度風の説明をしたいと思います。
偏西風
亜熱帯高圧帯から高緯度にかけて吹く地上の風はコリオリ の力によって曲げられ、西風になっています。そしてこの地帯では上空ほど西風が強くなっています。
これは南北の温度差があるため、上空ほど風が強くなっているのです。
温度風
地衡風の鉛直シア(これを温度風という)から、その層内の気温傾度や温度移流がわかるんですね。
整理すると、
♣︎温度風は等温線と平行
♣︎温度風は低温側を左手に見るように
♣︎風向が高度とともに時計回りしているとき、暖気移流、反時計回りなら寒気移流
以上のようになります。
↓わかりやすさのために、北側を低温に南側を高温にしました。
気象庁のホームページには、全国33箇所に設置されたウィンドプロファイラで観測した風の情報が載っています。
ここで風向風速のシアを確認することができ、気温の予想をするためのヒントになっています。
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今回は短いですが、こんなところで。
温度風という概念を理解するのはなかなか難しいです。
私は大気の大循環の話を先にたっぷりしないと、温度風について語れないと思いました。(ちょっと今回は言葉足らずなんで、加筆するかもしれません)
次回も中緯度の熱輸送の話から出発して今度は温帯低気圧についてお話しようかなと思います。せっかく前回ロスビー波を登場させたので、ブロッキング現象やエルニーニョ(ラニーニャ)の話に飛んでもいいかなあと思っています。
お話しの順番を考えるのは楽しくもあり、難しいところでもあります。
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大規模な大気の運動①大気の大循環
週に1回は更新しようと思っていましたが、2週間ほどご無沙汰になってしまいました😅気象予報士試験まであと49日です😵
もうほとんど今回で合格することは諦めているんですけど、なんとか土台だけはきちんとしておこうと思っているところです。
という訳で、直前ですけどブログも一応続けたいと思います。
今回はちょっとスケールの大きな話をしたいと思います。
地球の熱収支の話から大規模な風について考えたいと思います。
前回のおさらい
前回は風を表す物理量ということで、発散(収束)と渦度という物理量をご紹介しました。
▼水平方向の風の発散(収束)と鉛直流の関係
▼渦度とは
▼絶対渦度とは
▼補足(渦度の発生要因)
手にペンを挟んで回そうと思うと、渦度っていう物理量を知らなくても自然とできますよね。速度の差(シア)によって、鉛直方向にペンが回るんですね。
流れに曲率があるときというのが私はなんとなく理解するのが難しいのですが、専門の勉強で衛星のことを調べていて少しわかった気がします。↓
さて、今回は地球の熱収支について、その偏りを解消するためにどのように熱を輸送しているか、そのために吹いている風についてです。
大気の放射の話をした際、このような図で地球の熱収支を表しました。
地球全体としては、このように吸収する太陽放射量と放出する地球放射量が釣り合っていますが、緯度ごとにみる考えてみると、高緯度では熱が不足し、低緯度では熱が余っています。
※図解 気象学入門(p134)より
この熱の偏りによる温度差を解消するために、低緯度から高緯度に熱が運ばれます。
赤道付近では太陽からの放射に対して地球の放射が小さいので、よく熱せられて地上付近では低気圧となり、南北から風が吹き込みます(収束)。ぶつかった大気は上昇して、積乱雲が活発に生じます。雲の発生によって凝結熱が放出され、大気が加熱されます。
対流圏界面まで上昇した空気は、それ以上は上昇できずに南北に発散します。
コリオリの力によって赤道付近からの上空の風は東に曲げられ西風に、下層の風は北東風になります。
赤道付近上空の風が高緯度側へ移動するとき、高緯度側にいくほどコリオリ の力が大きく働き風向は西に近づき、風速も強くなります。このように西風が強くなると、ある地域から高緯度側へは風が進めなくなります。そこが亜熱帯高圧帯です。
亜熱帯高圧帯(中緯度付近)では地上の気圧が高くなって、上空から空気が下降してきて地上で発散します。この地上で発散している風は、下降によって空気が断熱圧縮されており、暖かく乾燥しています。このため亜熱帯高圧帯では雨が非常に少なく、降水量よりも蒸発量が多くなるため、砂漠が多くなります。
亜熱帯高圧帯では上空ほど西風が強くなっており、偏西風帯となっています。この偏西風帯の風速の極大域をジェット気流といいます。
赤道上空で自転によって回転していた空気が中緯度帯に移動することにより、風速が強まっているのです。
これは角運動量保存則で確認することができます。
cosφやsinφの取り得る値の範囲からも赤道付近に比べて中緯度の方が西風が強いとわかりますが、具体的に値を入れてみます。
RΩ=460m/s,u0=0m/s,φ=30°を代入してみると
u≒133m/s
赤道付近で相対的に風が吹いていなかったとしても、その空気が緯度30度に移動するとこのように強い風が吹きます。実際には空気抵抗でかなり減速され、30m/sほどになります。
一方、極域では太陽からの放射に対して地球の放射が大きく、極域の上にある空気は冷やされています。そのため地上付近では気圧が高くなり、相対的に気圧の低い低緯度側に空気が移動します。コリオリの力によりこの風は北東風(極偏東風)になります。
この極偏東風が極域に冷たい空気を運び、偏西風が暖かい空気が運びます。その冷たい空気と暖かい空気がぶつかるところを寒帯前線と言い、雲が発生しやすい地帯となっています。この寒帯前線においても上空に行くほど強い西風があり、これを寒帯前線ジェット気流と言います。南北の水平温度傾度特に大きく、そのことが上空ほど西風が強くなるということと関係しています。
これは温度風という概念で説明できます。
(温度風については長くなりそうなので、また次回にしますね!)
寒帯前線帯ジェット気流は南北に蛇行しています。
これは、前回お話しした絶対渦度保存則で説明できます。
惑星渦度は赤道で0、高緯度ほど大きく、極では最大(2Ω)になります。
絶対渦度保存則より、相対渦度は惑星渦度が増えればその分減り、減ればそれを補うよう増えます。
北半球で偏西風が吹いている状態の500hPa(非発散場)において、相対渦度0の空気塊が北に移動すると、上の図のように相対渦度が負になります。つまり、高気圧性循環になります。すると、空気塊は向きを変えて低緯度側に向かいます。このようにコリオリ パラメーターが空気塊の南北変位に対して元に戻るように働きます。その結果、偏西風は波打つようになります。(ロスビー波)
ハドレー循環では直接南北の熱を輸送できていますが、中緯度のフェレル循環ではこのように蛇行することによって南北の熱を輸送することに貢献しています。
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今回はこの辺までにしたいと思います!
本当は温度風の話や温帯低気圧の話もぜーんぶまとめてやりたいんですけど、力及ばず…。
個人的には今回の話あたりから一般気象学を読み進めていくスピードが落ちましたし、この記事を書くにも休み休み、数日かかってしまいました😹笑
試験も近づいてきて、純粋に気象の勉強をする楽しみを忘れそうになりますが、テスト対策もしながらまだまだ楽しんでいきたいと思います♩
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大気の力学④風を表す物理量
試験まで時間がないのに風邪をひいてしまい、1週間の大半を棒に振ってしまいました😷😭
演習やら新しいことのインプットなどの重たい勉強はちょっとキツイので、ブログでゆるく勉強したいと思います。
前回のおさらい
傾度風から旋衡風や慣性振動について勉強しました。
旋衡風はコリオリの力を無視できる風で、気圧傾度力と遠心力がつりあっている。
竜巻や塵旋風がこれに相当する。
慣性振動は気圧傾度がない場合の風。コリオリ力と遠心力のつりあいで、高気圧性の風が吹く。
また、p座標系について勉強しました。
高層天気図は、等高度面ではなくて等圧面で記入されている。
(t,x,y,z)系ではなくて(t,x,y,p)系で考えることは、高層気象観測で取得できる情報を図に表すのに自然だから、という理由の他に、連続の式がシンプルに記述できるようになるからという理由がある。
以上のようなことを勉強しました。
今回は、連続の式から風の発散(収束)のお話、渦度のお話をしたいと思います。
発散と上昇流
まず発散・収束を表すダイバージェンスの意味についてはこちらから。
ある高度(気圧面)における風が、発散しているか収束しているかということをこのように表します。連続の式が鉛直流と水平方向の発散(収束)を関連づけています。
地上で風が収束していたら集まってきた空気は他に行き場がないので上昇するしかないですよね。
divVが0となる高度で鉛直流が極大(または極小)となり、鉛直流が0である(上昇流と下降流の切り替え面)高度で水平発散(収束)があります。
下から上昇流がやってきて、上から下降流が降りてくるような高度では水平方向に風が広がりますよね。(発散)
渦度について
さて、続いては風の循環についてです。
低気圧性循環と高気圧性循環について以前勉強しました。
今回勉強する渦度は、そのような回転の方向と速さを表す量です。
気象の勉強をする上では、鉛直方向の渦度が重要です。
定義から、正の渦度が反時計回り(北半球では低気圧性循環)、負の渦度は時計回りです。
地球は自転しているので、そのことによる渦度というのも地球の外から見るとあります。角速度の2倍が渦度であるということからも、ある緯度φにおける自転による渦度は2Ωsinφであるとわかります。これはコリオリパラメーターですね!
これと相対的な渦度の和は保存するというのが絶対渦度保存則です。
絶対渦度は、粘性や発散(収束)のない大規模な運動において保存されます。
500hPaの天気図を見る際、これが役に立ちます。
というのも、500hPaでは理論上非発散場であり、渦度の保存性が高くなるからです。
緯度によるコリオリ力の影響の違いも考えた上で、例えば台風を追ったりすることができるんですね。(まだ私の勉強が進んでいないので、そうっぽいですよという言い方しかできませんが…(小声))
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今回は風を表す物理量についてお話しました。
気象予報士試験まであと2ヶ月です。気象の基礎をブログでまとめるというのも割と意地で(?笑)継続していますが、このペースだと本当に基礎の基礎で終わってしまいそうです。個人的には、暗記するものは先延ばしにしてきたので、今から大急ぎでやらないとです。あと演習。
受験までもう風邪引かないように、防御&メンテナンスしていきたいと思います٩( ᐛ )و
大気の力学③p座標系
なかなか勉強が捗っていない私です😅
演習が全然できていなくて、このままだと学科合格もかなり怪しいです😂
しかしやっぱり基礎が大事だと思いますので、この辺のところはブログにきっちりまとめていきたいと思っています!
今回は、前回の補足として気圧傾度力がない場合の空気の運動(慣性振動)や気圧傾度力と遠心力がバランスして吹く風(旋衡風)についてお話したあと、これから下層から上空と立体的に風の話をしやすくするために、高層天気図やそこで使われる座標系のお話をしたいと思います。
前回のおさらい
空気は気圧の高い方から低い方へと移動しようとする。(気圧傾度力)
地表面の摩擦を考えなくても良い上空で等圧線が平行なところでは、気圧傾度力とコリオリの力がだいたい釣り合っていると考えて良い。(地衡風)
風の流れが曲率を持つような場合は、コリオリ力と遠心力が気圧傾度力とバランスしていると考えて良い。(傾度風)
以上のように考えると、高気圧の周りの空気は時計回りに吹き出すように、低気圧の周りの空気は反時計回りに巻き込むような循環があるとわかる。(高気圧性循環と低気圧循環)
さらに、高気圧の風は気圧傾度に制限があることがわかる。低気圧は台風のような強い風を伴うが、高気圧はそのような強い風を伴うことがない。
以上のようなことを勉強しました。
傾度風の式から、慣性振動と旋衡風のお話をしたいと思います。
※竜巻の図は気象庁ホームページ(気象庁|竜巻などの激しい突風とは)より
慣性振動
前回もご紹介しましたが、傾度風の式をグラフにしたらこのようになります。
このグラフから、気圧傾度力が0のとき、風が吹いていないかもしくは高気圧性の風が吹いていることがわかります。大気中では滅多に観測されないけれど、流れが弱い海洋の中ではよく観測されるそうです。
旋衡風
コリオリの力が遠心力と気圧傾度力に比べて無視できるような場合(気圧傾度力が強く、風の速さが大きくて、曲率が大きいとき)の風を旋衡風と言います。
竜巻はこの旋衡風に相当します。
コリオリ力が無視できるということは、中心は低気圧でも回転は時計回りでも反時計回りでも可能ということです。ただ、竜巻は強い上昇流を伴うような巨大な積乱雲(スーパーセル)のもとで発生することが多く、そのような親雲がコリオリ力の影響で低気圧性の回転をしているので、北半球ではほとんどの竜巻が反時計回りの渦回転をしています。
**竜巻**
- 小さなスケール(数十m〜数百m)で極めて大きな気圧傾度(周囲との気圧差が20〜40hPa)→猛烈な風
- 大気の成層状態が不安定なときに起きる
上空に積乱雲や積雲があり、この雲底から漏斗雲が垂れ下がっている - 渦の中心の気圧低下によって空気塊が断熱膨張(冷却)し、水蒸気が凝結する
→漏斗雲(象の鼻のような白っぽいの)
**塵旋風(じんせんぷう)**
- 学校の校庭などで起きる砂埃を伴う渦巻き
- 竜巻とは違って上空に親雲を伴わない
p座標系(高層観測の方法)
上空の状態を知るのに、等圧面天気図が使われています。
天気図でみられるような総観スケールの大気現象について考えるとき、その広がりが対流圏の厚さ約10kmに比べて非常に大きい(2桁以上大きい)ため、鉛直方向に関しては、静力学平衡が成り立っていると考えます。(高度と気圧は静力学平衡の式で1対1の関係になっている。)
※気象現象を水平方向の大きさによって分類したとき、1000km〜10000kmのスケールで起こる現象を総観スケールといいます。
高層の観測のために使われるのが、ラジオゾンデというものです。
ゴム製の気球に水素またはヘリウムを入れた気球に、気圧・気温・湿度を測定する観測機器をぶら下げて地上で放ちます。気球の中のガスが膨張してあるところで破裂しますが、それまでは観測できます。
観測した気圧・気温の値から高度を計算(静力学平衡)して、人工衛星によるGPS解析から位置のズレを得て、各高度の風向・風速を求めることができます。
(GPS機能のあるラジオゾンデ(GPSゾンデ)もあります。)
このようにして得た情報を元に同じ気圧を持つ面に高度や風向・風速・気温・湿数をプロットして、高層天気図ができます。
このような等圧面天気図は、気象要素を気圧の関数として見ています。
独立変数(t,x,y,z)ではなくて独立変数(t,x,y,p)で表されているんですね。
このような座標系をp座標系と言います。
この座標系は3次元で風を考える際に便利です。
というのも、流体の連続の式を考える場合にとてもシンプルになるからです。
式から密度が消えてシンプルになりました。
ここを起点にして色んなお話ができると思いますので、次回からやっていきます。
最後に気象の勉強にもお役立ちな動画をご紹介します!
風の発散(収束)とか渦度とか理解しようとするとき、ベクトルで扱えると便利です。
ヨビノリ たくみさんはめちゃ賢くて、難しいことも多くの人がわかるように説明してくれています。
キリが悪いですが、今回はこの辺で(^^)/~~~
大気の力学②風について
気象予報士試験まであと73日です!ついに受験申請期間がスタートしました〜
(ちょっとまだ合格が全然見えないんですけど、なんとか踠いてみようと思っているところです。笑)
さて、今回は風についてお話ししたいと思います。
前回は高校の物理でも習う運動方程式からコリオリの力の話を少ししました。
(座標を回転させたり、極座標系に変換したり)
今回はそれらを使ってもうちょっとコリオリの力についてもう一度考えて、空気の運動(風)についての勉強をしていきます。
(目次がだんだん気象っぽくなってきたな…)
前回のおさらい(コリオリの力について)
回転座標系で運動方程式は、
極座標で書くと、
ただ座標を変換しただけです。
これから地球を対象にしていきます。
回転座標系で表すことで回転はできましたから、次は地球用に球面にするんですね。
緯度情報を入れてあげます。具体的は、回転座標系のωにω=Ω sinφを代入しましょう。
北極点ではω=Ωとなり、赤道ではω=0、南極点ではω=-Ωとなります。
これで緯度φにおけるコリオリ力は、ω=Ω sinφを代入することによりこのようになります。東西方向および南北方向に2Ωsinφが共通因子となっているのでこれをコリオリパラメータと言い、f=2Ωsinφと表します。
コリオリ力=f×V
やっと教科書で紹介されているコリオリの力になりました!
気圧傾度力(流体の運動方程式)
さて、では風について考えていきます。
風っていうのはざっくりいうと空気(分子)の流れのことです。
風船を膨らませてから口を結ばずに手を離すと、風船から自分が吐いた息が返ってきますね。空気は気圧を一定にするように動こうとするので、このように気圧の高い方から低い方へ流れます。これが気圧傾度力です。
これも運動方程式で考えることができます。
流体の場合、質点の運動方程式と違って流体の形が時間とともに変化するので、それに伴って圧力が変化しています。その圧力のみを外力として考えると、このように運動方程式を立てることができます。
空気の流れが直線の場合の風(等圧線平行)→地衡風
平行な等圧線を書いてみると、気圧傾度力はこのように表すことができます。
そしたら、風は等圧線に垂直に吹くのかな?と思ったらそうではありません。
なぜなら、地球は自転しているのでコリオリの力を考えなくてはならないからです。
高層天気図をみると、風はほぼ等圧線に平行に吹いています。
これは、地表の摩擦の影響を考えなくても良い上空では、気圧傾度力とコリオリの力がだいたい釣り合っているように風が吹いているからです。
このように、等圧線に対して平行に吹く風を地衡風と言います。地衡風は、気圧傾度力がコリオリ力と釣り合っていると仮定したときの(仮想的な)風です。
上空の風は地衡風に近似して考えることができますが、地表付近ではどうでしょうか。
私たちは、ビルの高いところに行くと風が強いなと感じることがありますね。
これは、地表付近では摩擦力が働いて風が弱まっているからなんですね。
摩擦力が大きいほど、地衡風より風が弱くなり、風向きも等圧線を横切るように低圧側に流入するようになります。風が等圧線となす角は、陸上では30〜40°、海上では〜20°になります。(陸上では摩擦力が大きい)
風の流線が曲率を持つとき→傾度風
等圧線が平行ではなくて、曲率を持つ場合についても考えてみます。
シンプルに、同心円状の等圧線とそれに沿う流れを考えます。
低気圧や台風をイメージするとわかりやすいと思います。
ここから考えます。
遠心力が低気圧では風を弱め、高気圧では風を強めています。
低気圧性曲率と高気圧性曲率
傾度風の曲率がない場合(r= ∞)が地衡風なので、
低気圧性循環は反時計回りに回り込む、高気圧性循環は時計回りに吹き出すというのがわかります。
高気圧の場合、ある気圧傾度を超えると平衡が成り立たなくなって、外向きに風が吹き出します。
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今回はこの辺で。
ちょっと朝型生活始めてみようかな、と思ったらもう眠くて。笑
次回も風の話を続けていきたいと思います。
大気の力学①運動方程式をいじる
お久しぶりの投稿になってしまいました。
最近はちょっとインプットばっかりで、問題を解いたりブログ更新したりっていうアウトプットが滞りがちでした😅専門分野でちょっと苦戦しておりまして…
今回はリフレッシュのためにも運動方程式をいじってみたいと思います。
まず、運動方程式って何?というところから。
運動方程式とは
本当は、この箱の重心にだけ質量があるわけじゃないんだけど、重心にこの箱の全質量が集中していると考えると、物体の運動(加速度)はこのようにシンプルに表すことができます。
目の前の運動について考えるのであれば、大体の運動はこのまま運動方程式を使って記述することができるのですが、地球は自転していますよね。
ですから、地球の中にいる私たちの視点で地球規模の運動を考えるときにはちょっと工夫が必要なんです。
今回は、地球の中にいる人が地球の運動を考えやすくするために、
①座標を回転させよう
②極座標に変換してみよう
以上を実践してみたいと思います。
というように、自然と分解できますのでお楽しみに😄
①座標を回転させよう
この運動方程式の右辺第1項が回転座標系の中からみた見かけの運動、第2項をコリオリの力、外向きに働く第3項を遠心力と言います。
②極座標に変換してみよう
今度は極座標で考えてみます。
このθを、地球の自転によって変化した分と相対運動によって変化した分とで分けてみると、
このように、地球の自転による遠心力とコリオリの力がみえます。
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今回はただひたすらに微分してみました。
面倒臭いけど、深く考えずに計算してみるっていうのも、リフレッシュ…にはならないかもしれないけど、無心になれます笑
コリオリの力とか遠心力って特別どこかから湧いてきた力ではないっていう解釈でいいんじゃないでしょうか。
今回運動方程式をいじってみましたが、これは風を考える上での下ごしらえなんです!
次回、風についてまとめていきたいと思います。
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